我々の生活圏に普通に見られる、といいますか、よほどの都会でないかぎり、太陽の光がふりそそぐ川べりなどに、このノイバラが元気に繁茂しているのを見ることができます。
こんもりと茂って人の背丈ぐらいの大きさになることもありますが、5月ごろに、白い花を大量につけて、葉の緑が見えなくなるほどになることもあります。
春に、白い花をいっぱいにつけるというのは、バラ科の特徴です。サクラ・ナシ・ウメ・リンゴなど、食用になるものだけ見ても、いくらもあります。
![](https://sansyu-dayu.com/wp-content/uploads/2022/07/07093432c94e1c6b76d1a7f88ce0ba7a.jpg)
この植物について、最初に感じるのは、その花の匂いです。
季節柄、多くの花が咲きそろう時期ですが、なにせ花の量が多いということもあり、近づけば必ず嗅覚が襲われるような強い香りを感じずにはいられません。
その匂い(香り)についてですが、『朝日百科 植物の世界055』によれば、以下の6種類に分類されており、ノイバラはスパイシーに振り分けられるとあります。
- ダマスク・クラシック
- ダマスク・モダン
- ティー
- フルーティー
- ブルー
- スパイシー
スパイシー?という感じですが、チョウジ(クローブ)の香りが混ざっているから、ということです。
いずれにしても、自然に存在する植物の花が、そのまま天然香料の原料となっている、というのは、この植物が人間にとって、十分に有用なものであることを証明しています。
人間の嗅覚に訴えることの次に、人間の味覚についてはどうなのか?ということですが、これはどうも食物としての側面は少ないようです。
同じ口に入れるということで、薬用という意味では、多くの用途があるようです。主にその実(偽果)が対象となります。
秋になると、たくさんの赤い実(偽果)をつけますが、その偽果を「営実(エイジツ)」と呼んで、それの持つ薬効を昔から利用してきました。
![営実](https://sansyu-dayu.com/wp-content/uploads/2022/09/rose-fruit-e1662851301541.jpg)
成分としては、複数のフラボノイドとカロチノイドを含みます。フラボノイドの「multiflolin A」に強い瀉下作業があります。日本薬局方には、粉末剤として『エイジツ末』が登録されています。日本薬局方は、頻繁に更新されますので、興味のあるかたは直接、厚生労働省のHPから入られたほうがよいです。
ノイバラの近縁種は、世界中に広く分布していますが、洋の東西を問わず、こういった有用植物についての利用は、まるでどちらかが真似しているの?と思いたくなるほど、似たような歴史を持っています。
フランスの伝統医療で著名な「モーリス・メッセゲ」氏の『メッセゲ氏の薬草療法』によれば、以下の効能を挙げています。
- 下痢、胃痙攣、嘔吐、消化不良の特効薬
- 強壮、収斂、発汗、利尿の薬効
- 緩下作用、血液浄化作用
- 壊血病、くる病の予防
そして、それらのためのノイバラの利用方法として、浸剤・煎剤・粉末剤・シロップ・マーマレード・ジャム・リキュール・浴用剤の作成法まで紹介されています。
また、Plants For A Futureでも、薬効(Medicinal Uses)が紹介されており、その要点としては
葉は湿布され、痛みに適用。果実は、アノダイン、利尿剤、低血糖症、下剤です。また、魚の中毒に対する解毒剤でもあります。便秘や関節痛の治療に使用され、潰瘍、創傷、捻挫、怪我の治療に使用されます。種子は下剤と利尿剤です。根はタンニンが豊富です。収斂性と駆風性があります。この属の多くのメンバーの果実は、特にビタミンA、C、E、フラボノイド、その他の生物活性化合物において、非常に豊富なビタミンとミネラルの供給源です。また、果物としてはかなり珍しい必須脂肪酸のかなり良い供給源でもあります。ガンの発生率を減らすことができる食品として、またガンの成長を停止または逆転させる手段として研究されています。
現在の日本では、利尿・下剤としての民間療法が主なものとなっていますが、「井沢一男 薬草カラー図鑑」には、おでき、にきび、はれものにも効果ありとしています。
こうしてみると、いろいろな効能がありずぎる感じで、これはもしかすれば、東洋人と西洋人の基本的な体質の違いによる、影響の差異といえるものかもしれません。
ここにあげた多くの薬効とは別に、いわゆる”ハーブ”の代表としての面があります。私たちとしては、むしろそのほうが、日常的に接する機会が圧倒的に多いと感じています。
営実は、英語では「rose fluit」となります。これで検索すると、まさにフルーツのようなバラの実が、食品として大量に呼び出されてきます。
日本ではバラの実を食べるといったイメージは、ほとんどないといっていいのではないでしょうか?とはいえ、有用という意味では、食用になるということほど強いものはありません。
なんだか、下痢しそうな感じがしてならないのですが、一度食べてみたい気もします。
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